奈良に春を呼ぶ「お水取り」とは
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奈良の冬の澄んだ空気のなか、東大寺二月堂に揺らめく炎。
古都・奈良に春の訪れを告げる伝統行事、東大寺の「お水取り」。
古くから「お水取りが終わらないと春が来ない」と語り継がれ、今年で1275回目という節目を迎えます。
千年以上、一度も絶えることなく続いてきた祈り。
本日はこの奈良の伝統行事についてご紹介します。
そもそもお水取りとは
一般に「お水取り」と呼ばれていますが、正式には「修二会(しゅにえ)」といいます。
東大寺二月堂の本尊・十一面観世音菩薩の御前で営まれる、悔過(けか)の法要です。
僧侶である「練行衆(れんぎょうしゅう)」が、人々に代わって罪を懺悔し、国家の安泰、万民の豊楽を祈る——。
個人のためではなく、世の中全体の安寧を願う祈り。
始まりは奈良時代、天平勝宝4年(752年)。
東大寺の実忠和尚によって創始されました。
その後、戦乱や火災など幾度もの困難に見舞われながらも、
行法は一度も途絶えることなく続けられてきました。
この絶えることなき営みは「不退の行法」と呼ばれています。
千年以上、同じ時期に、同じ場所で、同じ祈りが重ねられてきたという事実。
その積み重ねこそが、修二会の重みなのかもしれません。
炎の舞「お松明(おたいまつ」
修二会の期間中、毎晩19時頃。練行衆が二月堂へ上がる際の道明かりとして、大きな松明に火が灯されます。
松明を担ぐのは「童子(どうじ)」と呼ばれる人々。
重さ数十キロにもなる松明を掲げ、二月堂の舞台を駆け抜けます。
夜空に弧を描く炎。
舞台から降り注ぐ火の粉。
この火の粉を浴びると無病息災のご利益があるともいわれ、
古くから多くの人々がその瞬間を見守ってきました。
炎は闇を照らすだけでなく、祈りの象徴として夜空に浮かび上がります。
神秘の儀式「お水取り」
行事のクライマックスは、3月12日の深夜。
日付が変わり、13日の午前1時30分頃に行われます。
二月堂の下にある「若狭井(わかさい)」という井戸から、
観音様にお供えする「お香水(おこうずい)」を汲み上げる儀式。
これが「お水取り」という通称の由来。
若狭井には、こんな伝承が残されています。
かつて全国の神々が二月堂に集まった際、若狭国(現在の福井県)の遠敷明神(おにうみょうじん)だけが遅れて到着しました。
その詫びとして、二月堂のほとりに清らかな水を湧き出させた——と。
人々の祈りと、神々の物語。
その両方を内包しながら、若狭井の水は今もなお汲み上げられています。
開催概要
●期間:2026年3月1日(日)~3月14日(土)
●場所:東大寺 二月堂
※混雑緩和のため、拝観に一部制限が設けられる予定です。
※最新情報は公式サイト(https://www.todaiji.or.jp/)をご確認ください。
1270年以上続く祈りの炎。その熱気を心で感じながら、奈良への春の訪れを待つのも風流ではないでしょうか。
●参考情報
・東大寺公式サイト(https://www.todaiji.or.jp/)
・奈良市観光協会(https://narashikanko.or.jp/)
