夏の風物詩|職人の火花が夏を彩る。線香花火・花富士・鯨花火のご紹介

夏に咲く、小さな火の花。
線香花火や吹き出し花火は、ただの“遊び”を超えて、
日本の情緒や職人の手仕事の美しさを私たちに思い出させてくれます。
今回ご紹介するのは、福岡県・みやま市で100年以上の歴史を持つ
筒井時正玩具花火製造所が手掛ける、日本製の花火たち。
一つひとつ手作業で仕上げられた国産花火から、
富士山や鯨をモチーフにした玩具花火まで。
どこか懐かしく、あたたかな灯りが、夏の夜にそっと彩を添えます。
1.東西で異なる線香花火の”カタチ”
■東の線香花火|長手牡丹

細長い紙の軸に火薬を巻き付けた、最も馴染みのある線香花火。
関東地方で親しまれ、全国に広がっていったタイプです。
紙漉きが盛んだった関東では、藁の代わりに紙で火薬を包むのが特徴。
火を灯せば、ぽとりと落ちそうで落ちない火玉が、小さな牡丹のように静かに揺れます。
その儚く繊細な灯りには、どこか見つめていたくなる魅力があります。
赤を基調としながら、光の入り方で変化するこの輝きは、
手にした瞬間に“工芸の美”を体感させてくれます。
■西の線香花火|スボ手牡丹

関西地方に根付く「スボ手牡丹」。
「スボ」とは、ワラスボ(稲藁)のこと。
米作りが盛んな地域ならではの伝統で、藁の先に火薬を付けて仕上げられます。
実はこの「スボ手牡丹」、現在国内で製造しているのは筒井時正玩具花火製造所のみといわれています。
火を灯すと、約30センチ四方に火花が勢いよく吹き出すのが特徴で、まさに線香花火の原点ともいえる存在です。
2.富士山が吹き上げる玩具花火「花富士」

日本の象徴、富士山をモチーフにした玩具花火「花富士」。
静かな山容を思わせる形から、地中から吹き上がるように火柱が立ち上がる姿は、活火山のような躍動感を感じさせます。
赤と青の2色展開で、並べるとまるで浮世絵のような風情。
富嶽百景を想起させるその佇まいは、眺めてよし、灯してよしの特別な玩具花火です。
3. 鯨が潮を吹く?ユニークな「鯨花火」

大きな体から潮を吹き上げる鯨の姿を吹き出し花火で表現したのが「鯨花火」。
灯すのが惜しくなるほど可愛らしいフォルムは、飾っても楽しめます。
子どもから大人まで、思わず笑顔になるような遊び心が詰まっています。
4.小さな火に込められた、幾重もの手仕事と深い手間暇
今や市場に出回る花火の多くが海外製。
そんな中、一本一本、職人が手仕事で仕上げる国産花火は非常に貴重です。
筒井時正玩具花火製造所では、素材選びから火薬の調合、巻き付け、乾燥まで、すべての工程を丁寧に行っています。
― 手でつくる火は、手で灯すことで真価を発揮する。
夜空に大きく咲く花火とは違う、小さくて静かな火の美しさを、この夏、ぜひ体験してみてください。