暮らしに、そっと彩りを。津軽びいどろが映す、季節のかけらたち

画像提供:津軽びいどろ(北洋硝子)
ふと手に取ったグラスの中に、
静かな風景が閉じこめられていることがあります。
青森・津軽の地で作られる「津軽びいどろ」は、そんな日常の一瞬を手のひらに留めてくれます。
約1300度の炉で溶けたガラスに、職人の息づかいと感覚が重なって生まれるひとしな。
ふたつとして同じものはないその表情に、どこか心がほどけていくのを感じるのです。
今回は、津軽の手しごとが生んだガラス工芸の数々をご紹介します。
津軽の景色をガラスにとじこめて

画像提供:津軽びいどろ(北洋硝子)
春、霞がかった桜色。
初夏、光を受けてきらめく田園の緑。
梅雨どきに咲く紫陽花、そして秋の山々を染める紅葉。
そんな四季折々の風景を、まるで絵巻物のように閉じ込めたのが、津軽びいどろの「季節のタンブラー」シリーズです。
このタンブラーは、職人がひとつひとつ「宙吹き(ちゅうぶき)」という技法で作り上げています。
約1,300度で溶かしたガラスに色ガラスを重ね、息を吹き込む。
その日の気温や湿度、職人の感覚によって生まれる唯一無二の表情。
たとえば、「夏の田園」は、緑のグラデーションと土のような色合いの粒が絶妙に散りばめられ、まるで青空の下に広がる風景を映しているかのよう。
「舞う桜」や「紫陽花」、「紅葉山」も、それぞれの季節の空気をそのままガラスに写し取ったような、心和む仕上がりです。
グラスに注いだ冷たい飲みもの越しに、季節の記憶がふわりと浮かび上がってくる。そんな時間を、ぜひ味わってみてください。
見守るようにそっと佇むふくろう

画像提供:津軽びいどろ(北洋硝子)
ころんとした丸み、ちょこんとした目元。どこか誇らしげで、でも親しみのあるその姿は、まるで静かに見守ってくれているようです。
この作品を手がけるのは、長年ガラスと向き合ってきた伝統工芸士・篠原義和(しのはら よしかず)さん。
「自分にしか作れないオーナメントを」との想いから、型を使わず、ガラスの塊に刃物やコテをあてて、直感でカタチを削り出していくのだとか。
だからこそ、どのふくろうも少しずつ違う、愛らしい表情をしているのです。
日本では古来より、ふくろうは「福来朗(ふくろう)」「不苦労(ふくろう)」と呼ばれ、福を呼ぶ縁起物として親しまれてきました。
光を受けてやわらかく揺らぐ胸元の色ガラスは、まるで呼吸しているかのように見えることも。
窓辺や玄関にそっと置いて、心にふっと安らぎをくれる、そんな小さな存在です。