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2025.10.19

漆器の“木地”を知る ― 漆器に欠かせない土台のはなし

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漆を塗る前の土台となる部分、”木地(きじ)”。
何度も漆を塗り重ねると外からは見えませんが、
この木地があるからこそ、漆器は軽くてあたたかい使い心地になるのです。

今回は、この“木地”についてご紹介します。
 

木を選び、形をつくる人たち

木を選ぶところも漆器づくりには欠かせないポイント。
ケヤキやトチ、ミズメザクラなど、丈夫で歪みにくい木がよく使われるのだそう。
木目や硬さを確かめながら、器に合った材料を見つけていくのです。

その木を削って形をつくる職人が”木地師(きじし)”。

木の状態を見ながら厚みを調整し、手に持ったときにしっくりくるカタチを探るのです。
ただ削るだけではなくて、木の特徴にあわせて無理のないカタチに整えていく。

経験と感覚の積み重ねが求められる技術です。

木地のつくり方にもいろいろあるんです

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木地と一口に言っても、そのつくり方はいくつかあります。
それぞれの木の特性に合わせて、使う技が少しずつ違うんです。
 

挽物(ひきもの)

ロクロを使って木を回しながら削る方法。
お椀や鉢など、丸い形の器に向いています。

曲物(まげもの)

薄く削った板を曲げて輪にし、底をつける方法。
お弁当箱や飯びつなど、軽くて手なじみの良い形に仕上がります。

指物(さしもの)

板を組み合わせて箱を作る方法。
 文箱や重箱など、角ばった形の器に使われます。

籃胎(らんたい)

竹を編んで形を作り、その上に漆を塗る方法。
通気性があり、見た目も軽やかです。
 

木地が器の印象を決める

同じ形でも、木地が厚いか薄いかで印象は大きく変わります。
厚めの木地はしっかりとした重みがあり、
薄めのものは軽く、手に取ったときに繊細さが感じられます。

漆を塗ると木の姿は見えなくなってしまいますが、
実はこの木地が器の使い心地や印象を決める重要な部分なのです。

見えないところにこそ、職人の丁寧な仕事が詰まっています。


木地師たちは、長く使っても歪まず、
毎日手に取っても心地よい形を目指して作っています。
見えなくなっても、しっかりと生かされている。

漆のツヤや色に目を向けるとき、
その下にある木の土台にも少しだけ思いを寄せてみてください。

参考

  • すぐわかるうるし塗りの見分け方(東京美術)

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