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2025.10.22

甲州印伝とは?その歴史と魅力

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提供:印伝の山本

鹿の革に漆で文様をのせた「甲州印伝(こうしゅういんでん)」、ご存知ですか?
実はこの工芸、400年以上もの歴史があるんです。

手に取ると、しっとりと馴染むやわらかさと、光の加減でふっと浮かび上がる漆の艶。
その独特の質感は、昔から多くの人に愛され続けてきました。

今回は、そんな甲州印伝についてご紹介します。

鹿革と漆が織りなす、やわらかな強さ

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提供:印伝の山本

甲州印伝は、鹿革に漆で文様をのせる
日本独自の革工芸。

しっとりとした手ざわりと、ぷっくりと浮かぶ
文様の立体感。

その質感は、革が柔らかく、
手に馴染むほどに味わいを増していきます。

印伝に使われる鹿革は、軽くて丈夫。
そしてとても柔らかいのが特徴です。

漆の文様を重ねることで、
美しさと耐久性を兼ね備えた素材に。

手仕事によって仕立てられた印伝は、
”使うほどに育つ”—そんな工芸品の1つです。

甲州印伝のはじまり

甲州印伝の起源は、なんと奈良時代にまで
さかのぼるといわれています。

当時、鹿革はその丈夫さと柔らかさから、
武具や鎧の素材として重宝されていたのだとか。

戦国時代には、燻べ(ふすべ)や更紗(さらさ)といった技法を用いて、鎧や兜、装飾品などにも用いられるように。

「印伝」という名前が広まったのは江戸時代。

寛永年間(1624〜1643年)に外国から「印度(インド)装飾革」が献上され、それをもとに日本で作られた革細工が“印伝”と呼ばれるようになったといわれています。

江戸後期には、現在の山梨県甲府市を中心に産地が形成され、滑稽本『東海道中膝栗毛』(1802年)にも「印伝の巾着を出だし、見せる」といった記述が残っているそう。この頃にはすでに、印伝は人々の暮らしに身近な存在となっていたようです。

使い込むほどに味がでる—それが魅力のひとつ

甲州印伝の魅力は、使うほどに変化していくその姿。

新品の印伝は少し固く感じることもありますが、
使い込むほどに手に馴染み、革の質感がしっとりと柔らかくなっていく。

漆の文様は時間とともに落ち着いた光を放ち、深みのある艶へと育ちます。

それは、持ち主の手のぬくもりや暮らしの時間が、少しずつ革に染み込んでいくから。

10、20年と長く使い続ける人の中には、
修理を重ねながら大切に使い続ける方も多いのだそう。

かつては和装小物や巾着が主流だった印伝ですが、いまでは財布やバッグ、印鑑ケースなど、
そして最近ではポケモンやミャクミャクなどのキャラクターのデザインのものが誕生したりと
現代の生活に合う形へと進化しているんです。

伝統を守りながらも、今の暮らしに寄り添う——。

甲州印伝は、使う人とともに育ち、時代を超えて受け継がれる存在なのです。
 


参考


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