津軽の海風が育む色ガラス―津軽びいどろとは
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青森の澄んだ空気や、四季のうつろい。
その美しさを、ひとつの器にそっと閉じこめたようなガラスがあります。
その名も 「津軽びいどろ」。
手に取った瞬間に感じる、どこか柔らかくあたたかな気配。
今回は、この魅力的なガラスがどのように生まれ、どう育まれてきたのかをご紹介します。
漁師の道具から工芸品へ
津軽びいどろのはじまりは、意外にも海の道具作りでした。
青森県にある北洋硝子が創業したのは1949年。
当時手がけていたのは漁師たちが海で使うガラスの浮玉でした。
丈夫で割れにくい北洋硝子の浮玉は全国で支持され、
1970年代には国内トップの生産量を誇るほどに。
しかし、時代の流れとともに浮玉はガラスからプラスチックへ。
長年続いたガラス製造は、ゆっくりと終わりを迎えようとしていました。
それでも、職人たちの手には浮玉づくりで磨かれた
「宙吹き(ちゅうぶき)」 の技がしっかりと残っていたのです。
”この技を絶やしたくない”
その想いを胸に、職人たちは色ガラスの調合を独学で学び、研究を重ね、
ついに新しい工芸品として 「津軽びいどろ」 を誕生させました。
この挑戦から始まったガラスづくりは、やがて青森県初の伝統工芸品に。
今では国内外から愛されるブランドにまで成長したのです。
津軽びいどろの魅力
津軽びいどろの魅力として欠かせないのが、なんといっても 色彩の豊かさ。
桜の薄紅、夏の海の深い青、山々を染める紅葉、雪明りの白――。
四季がくっきりと巡る青森だからこそ生まれる色の世界。
この豊かな色彩は、小さく砕かれた色ガラスの粒
「シモ」から生まれているのです。
北洋硝子では100色以上のシモを自社で調合し、
まるで画家が絵筆を動かすように、職人がひとつひとつ色をのせていきます。
光を受けるとふわりとやわらかく表情が変わり、
眺めているだけで心がほどけていくような、そんな色合い。
その色を形へと導くのが、古くから受け継がれる 宙吹き(ちゅうぶき) の技。
1500度で溶けたガラスを竿に巻き取り、息を吹き込む。
わずかな力加減で厚みも丸みも変わってしまうため、
職人は炎の熱さとガラスの柔らかさを、、手の感覚だけを頼りに探っていきます。
1200度ほどに下がった一瞬の時間の中で、形は決まる。
その繊細で緊張感のある作業の先に生まれるのは、
二つと同じものがない “生きたガラス” の姿です。
ときには海の波のように揺らぎ、
ときには春風のように軽やかに。
色と形が溶け合って生まれるその作品には、
四季とともに暮らす土地の記憶と、職人たちの息づかいがそっと宿っているのです。
津軽びいどろをご自宅に

47 TREASUREでは、津軽びいどろで作られたふくろうの置物を誤ご紹介しております。
ふくろうは「福来郎(福が来る)」「不苦労(苦労しない)」などの語呂から、
古くから縁起物として親しまれ、退職祝い、長寿のお祝い、家族の節目の贈りものに
選ばれてきました。
津軽びいどろのふくろうは、型を使わずにつくられる一点もの。
竿に巻き取ったガラスを、ハサミを使って尾や羽の流れを作り、表情を与えていきます。
青森県の伝統工芸士・篠原義和氏が手がけるその姿は、愛らしく、どこか凛々しい。
是非ご自宅に、お好きなお色味のふくろうを迎え、
津軽びいどろをお楽しみください。
