400年も続く波佐見焼のものづくりの裏側
長崎県・波佐見。
この町では400年以上にもわたって、暮らしを支える器が作られています。
ひとつの器ができるまでに
沢山の職人の手と技が詰まっていることをご存知でしょうか。
それぞれが自分の仕事を極め、次の職人へとバトンを渡す。
そんな分業制で生まれているのが波佐見焼なんです。
今回は、そんな波佐見焼のものづくりの裏側をご紹介します。
 
町全体がひとつの工房
波佐見焼づくりは、ひとりの職人では完結しません。
型を作る・形を成形する・焼く・絵を描く――。
それぞれの工程にそれぞれの職人が担い、
町全体でひとつの器を完成させる“分業制”という仕組みが根付いているのです。
江戸時代の初め、磁器の需要が急速に高まるなかで、
波佐見の人々はこの体制をいち早く取り入れられたのだとか。
ひとりでは難しい大量生産を、町ぐるみの協力で実現。
質を保ちながら多くの人に器を届けることを可能にしたのです。
この仕組みは、時代が変わった今も、波佐見焼のものづくりの中心にあるのだそう。
職人たちがバトンをつなぐ
波佐見焼を語るうえで欠かせない、各工程の職人たち。
それぞれの仕事が次の工程へと繋がっていくのです。
形の設計者|型屋
まずは、器の形を決める型屋(かたや)の仕事。
図面をもとに石膏を削り、精密な型をつくります。
この型があるからこそ、同じ形の器を正確に量産が可能に。
波佐見焼の「整った美しさ」は、この型づくりから始まるのです。
形を生み出す職人|生地屋
次に、生地屋(きじや)が型に土を入れて形をつくります。
回転台を使う「機械ロクロ」や、液状の土を流し込む「鋳込み成形」など、
用途やデザインに合わせて使い分けられていきます。
成形が終わると、風通しのよい場所でじっくりと乾燥。
この段階で、器の輪郭が整えられるのだとか。
火と絵を操る匠|窯元
乾燥した生地は、窯元(かまもと)で焼かれていきます。
まず900度ほどの温度で素焼きを行い、強度を出したうえで絵付けを施す。
藍色の絵具「呉須(ごす)」で線を描く染付や、
印判・転写などの模様づけは、窯元の個性が出るのだとか。
その後、釉薬をかけて1300度の高温で本焼成。
釉薬が溶けてガラスのような膜を作り、光沢と強度を与えます。
火と釉薬の加減は、まさに職人の勘と経験の世界です。
こうして出来上がった器が商社等を通して、みなさまの元へ届いていくのです。
伝統を守りながらも進化し続ける
波佐見焼の特徴は、伝統を守りながら、時代に合わせて柔軟に進化してきたこと。
昭和の時代には、今も定番として愛される柄や形が誕生したのだとか。
それらは「ロングライフデザイン」と呼ばれ、流行に流されない普遍の魅力を持っているのです。
そして現代。
軽くて持ちやすい器、電子レンジや食洗機にも対応する素材、収納しやすい設計など。
私たちの日常の使いやすさを追求した商品が次々と生まれています。
全国に先駆けて「無鉛化(むえんか)」にも取り組み、
釉薬から鉛を取り除いた、人と環境にやさしい器づくりも実現。
伝統を守りながら、新しい暮らしに寄り添う――
その姿勢こそが、波佐見焼が400年続く理由なのではないでしょうか。
手に取った人の毎日を、静かに、確かに豊かにしてくれる器。
職人の手と想いが息づくこの町では、
今日もまた、新しい器が生まれ続けているのです。
        
              
              
              
              
              
              
              
              
              
            
              
            
              
            
              
              
              
              
              
              
              
              
                  
                  
                  
                  