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2025.08.15

”だるまに人生を重ねて” ——三代目・今井勤さんという人

タグ:#職人

だるまって、何気なく目にしているけど、作っている人のことはあまり知らない。

そんなふうに感じたこと、ありませんか?

今回ご紹介するのは、群馬県・高崎市でだるまを作っている今井勤(いまいつとむ)さん。

おじいさんの代から続く工房で、三代目として筆をとる毎日。静かな口調で話す今井さんの言葉には、続けてきた人だけが持つ重みがありました。

そんな今井さんのことを、今日はすこしだけ、のぞいてみませんか?

甘いものには目がない、今井さんの素顔

今井勤さん
名前 今井 勤(いまい つとむ)
誕生日、年齢 昭和39年(1964年)生まれ 現在60歳(2025年取材時点)
出身地 群馬県 高崎市
作っている工藝品 高崎だるま
好きな食べ物 甘いもの(和菓子も洋菓子も)

今井さんがはじめて一筆描いたときの話。

今井だるま本舗の工房
今井だるま本舗の工房

最初にだるまの目を描いたのは、小学生の時でした。

当時、とある番組に出演することになり、だるまに目や鼻を入れる作業を任されたのが、記憶に残る”最初の一筆”。

子どもながらに、「この線でいいのかな」と思いながら筆を運んだのだそう。でもその瞬間こそが、今井さんにとっての”職人としてのはじめの一歩”でした。

冬になると忙しくなるので、休みの日は自然と工房に入ってましたね

当時、だるま屋さんは冬だけが忙しい商売。

夏は農業、冬はだるま——そんな暮らしが当たり前でした。

特別なことじゃない。でもふと振り返ってみたら、いつの間にか始まっていた”職人の道”。

そんな原点が、今井さんにはありました。

気づけば副業から本業に

今井さんは高校を卒業後、一般企業に就職し広告販売の仕事を30年近く勤めていたのだとか。

けれどその間も、仕事が休みの土日は家業の手伝いとしてだるまを作り続けていました。

ホームページも自分で作って、広告も出して。会社での経験がそのまま役に立った感じです。

発注も少しずつ増え、次第に”副業”が”本業”に近づいていきました。

そんなとき、同級生でもある仲間と群馬県達磨製造協同組合で理事を一緒にやることに。

いわゆる“昭和の時代の体質”

みたいなものが、特にこういう職人の世界にはまだ残っているところがある。

そんな空気を感じながら、だったら自分たちの代でちょっとでも変えていけたらいいよね

と、自然と会話が生まれたのだそう。

せっかくやるならちゃんと向き合いたい

今井さんはそう思い、会社をやめて家業に入ることを決断したのだとか。

伝統を守るっていうより、自分のペースで続けられるように整えたいなって思ったんです。

大きな決意というより、自然と導かれるような流れのなかで——。今井さんは、自分の道を自分で選び取ったのです。

”無理せず続ける”を合言葉に、整えていく暮らし。

工房では、午前中はパートの方と、午後からは奥様と二人三脚で作業するのが日課。

「無理せず続ける」を合言葉に、日々の製作が進んでいきます。

むかしは夜中までやってたけど、今は無理しないようにしてます。

とはいえ、自営業だとつい仕事をしてしまう。

だからこそ——

旅行に行くときは”今日はやらない”って決めて、奥さんとちゃんと休むようにしてます。

オンオフのバランスが難しいけど、大事な時間を大切にしたい。そんな想いがにじむ日々のリズムです。

最近では北海道へ美味しいものを食べに行くなど、奥さまとふたりで旅を楽しむことも増えてきたそう。

忙しさの合間にも、心を整える時間をつくる。——そんなふうに、自分たちのペースを大切にしながら、暮らしと仕事を続けているのが今井さんの魅力の一つかもしれません。

歴史が宿るだるまさんの顔

だるまの顔って、どれも同じように見えるかもしれません。でも実は、ひとつひとつに“描いた人の個性”が出るんだそうです。

眉の角度とか、ひげの描き方とか。
家ごとに微妙に違うんです。

おじいさん、お父さん、そして今井さん。三代それぞれが描く「顔」があるけれど、やっぱりどこか似ているのだとか。

見る人が見れば、”あ、これは○○さんのとこの顔だね”ってわかるんですよ。

血のつながりが線の中にも現れる。そんなお話をきくと、だるまさんの表情をもっとじっと見てみたくなります。

道具へのこだわりと続けてきた人だけが持つ強さ

長年筆を握り続けている今井さんに、何かお気に入りの道具について写真を見せてもらえないかお願いしました。

すると、最近広島で購入したという「熊野筆」について教えてくれました。

”最近広島へ行った際に購入した熊野筆画像をお送りします。
右側が熊野筆で左側が通常使用しているだるまの髭用筆です。
さすが熊野筆、書きやすいのでお気に入りです。”

今井さんの愛用筆
提供:今井だるま本舗

どんな質問にも、さらっと、控えめに答えてくださった今井さん。でもその言葉の奥には、積み重ねてきた時間と経験がしっかりとあります。

特別なことはしてないです。ただ、続けてきただけなので。

それがいちばん難しくて、いちばんかっこいい。

何かを続けるって、思っているよりずっと難しくて、でもずっとやってきた人はその大変さをあまり語らない。

今井さんはまさにそんな職人さんのような気がします。

私たちはそんな今井さんに、47 TREASUREのサイトデザインを施した特別なだるまさんを制作いただきました。

ブランドの世界観をもとに仕上げていただいた、高さ75cmの大きなだるまさん。

もしどこかでそのだるまさんと出会ったら、是非お顔を見てみてください。

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