福島県の郷土玩具 あかべこができるまで
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ゆらゆらと首を振る姿が愛らしい 赤ベコ
その素朴な表情には、会津の地で受け継がれてきた祈りと、張子職人の手仕事が隠れているのです。
かつて、会津の下級武士たちは子供が生まれると赤ベコを贈ったのだとか。
どうか健やかに育ちますように。
そんな願いを託されてきた魔除けの守り神です。
名前の由来は会津の方言から。
茶色のことを「赤」、牛のことを「べこ」と呼ぶことから
この張子の牛は「赤べこ」と親しみを込めて呼ばれるようになったのです。
今回はこの赤ベコが完成されるまでの工程をご紹介します。
1.のりづけ
和紙6枚重ね貼りすることから始まります。薄い紙にのりを引き、何枚も、何度も。
強度を持たせるためのこの地道な積み重ねが張子細工の基本になるのです。
2.型造り

重ねた和紙を型にぴたりと押し当て、胴体の形を成形します。
和紙は乾燥すると固く締まり、牛の丸みを帯びたシルエットが浮かび上がります。
素朴さの中に温かさを感じる赤べこのフォルムは、この段階で生まれるのです。
3.型切り~背張り

完全に乾いたら、カッターで切り込みを入れ、型を取り出す作業へ。
本来は見えなくなる部分ですが、丁寧さが問われる工程。
張り子の胴体が、ここで初めて“空洞”として独り立ちします。
そして型を抜いた開口部分を、再び和紙で塞ぐ工程。
4.白塗り~赤塗

型を抜いた開口部分を、再び和紙で塞ぐ工程。
そして白い下地を塗っていく。
乾かしてから、もう一度。
塗っては乾き、塗っては乾き…
何度も重ねることで発色が美しく整い、のちの赤色がしっかりとのるんです。
5.絵付け・仕上げ

赤く染まった胴体に、黒・白・金で模様が描かれます。
・背中には「井(いげた)」
・お腹には「巴(ともえ)」
かつて家紋として使われていたこれらの文様には、
災厄から身を守る意味があるとも言われているんです。
そして最後に、目や口元などの表情を描き込んで。
一筆一筆に魂が宿り、ようやく赤べこらしい面影が現れるのです。
重りの入った頭部を胴体に付けたら、ようやく赤ベコが完成します。
会津の人々が子どもの幸せを願って贈り続けてきた、祈りの象徴。 その素朴な笑みの裏側には、職人たちの技と想いがたっぷりと詰まっています。 手のひらに乗せると、どこかほっとするような温かさがあるのは、 “人の手で生まれたもの”だからこそなのかもしれません。
