一合枡の中に込められた匠の技
ふと手に取ると、ひのきの香りがやさしく包み込む。
「枡(ます)」は、古くから計量器として日本人の生活に寄り添ってきました。
だけどその小さな木の器に宿るのは、
単なる道具ではなく、職人の誇りと精緻な手しごと。
岐阜県大垣市に工房を構える大橋量器は、
創業から70年以上、枡づくり一筋。
2020年には「大垣の木枡」「大垣の枡」として地域団体商標に認定され、
全国シェア80%を誇る“日本一の枡のまち”を代表する老舗なんです。
ここでは、そんな大橋量器が手掛ける枡づくりのこだわりについてご紹介します。
国産ひのきにこだわります
大橋量器の枡づくりに欠かせないのが、国産ひのき。
ひのきの中でも、木曽ひのきや東濃ひのきといった
日本を代表する名木の天然のものだけを選んでいるのだとか。
こだわる理由は、淡い白木の色合い、やわらかな光沢、指に伝わるなめらかさ。
そしてなによりも、ひのき特有の清々しい香り。
この香りには、「フィトンチッド」という成分が含まれ、
リラックス効果や抗菌・防虫作用があるといわれているのだとか。
ひのきは、まさに“香りを売る木”。
使うたび、時とともに味わいを増す天然素材なんです。
森を活かすものづくり
大橋量器が大切にしているのは、自然と共に生きるものづくり。
柱や梁を切り出すときに出る切れ端に、
新しい命を吹き込むことで、森の資源を無駄にしない。
さらに、製造過程で出る木の削りくずは、
商品の緩衝材や包装材として再利用。
“木を使い切る”という姿勢が、
森と職人の未来をつなぐ大橋量器のものづくりの原点です。
枡を永く楽しむために
ひのきの枡は、少しの気配りで何年も風合いを保つことができます。
ここでは、職人がおすすめする3つのポイントをご紹介します。
1.ご使用後は、「すぐ水洗い、すぐ自然乾燥」
2.外側を(あまり)濡らさない
3.水に浸さない
せっかく手にした枡。
どうせなら、永く美しく使い続けていただきたい。
今日注いだ一合が、何年も先に“思い出の香り”になる――。
そんな時間を、ぜひ味わってみてください。
